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『機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE』感想

今回は『機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE』(以下、プロローグ)のネタバレ感想。

ここ最近ガンダムは「閃光のハサウェイ」を観たくらいであんまり追いかけてなかったんだけど、これが面白かった。

前日譚として押さえるべき所と、単体としての面白さを24分間に手堅く盛り込んでおり、なかなか楽しめた。私の趣味にも合っていて、続く『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(以下、本編)も追いかけようと思うくらいには気に入った。

 

以下ネタバレあり。

無駄のない構成

まず、物語として無駄がない。GUNDを巡る対立とサマヤ一家を中心とした研究所内の人間関係、そして起こる悲劇を手際よく描いている。山場となるモビルスーツ戦を盛り込みつつ、駆け足な印象もない。

そして、プロローグが30分枠で作られていること自体に私は好感を持っている。一つには、基本的に長いよりは短い作品が好きだからだ。もう一つには、毎週同じ時間に30分間の番組を観るというルーティンが私にとって心地よく、その形式を尊重してくれいているからだ。そう感じるのは私がニチアサやテレビアニメで育った故だ。プロローグ自体はテレビ放送ではなく、イベント上映や各種サービスでの配信で観られるのだが、敢えて本編と尺を揃えてリズムを作ってくれているのが嬉しい。

GUND

プロローグにおける事件の発端は身体機能拡張技術「GUND」を巡る対立である。

このGUNDは身体機能を拡張する一方で人体へ悪影響を及ぼすこともある。この二面性を描くにとどめ、GUNDの是非について安易な答えを用意しないことで物語に奥行きが出来ている。原子力問題そのまんまな気もするけど。

実質的な主人公のエルノラはGUNDの両方の面を味わうことになる。彼女はかつてGUNDの義手で生き永らえた恩からGUND-ARMに従事しており、劇中でも命の危機をルブリスに救われた。一方で、ルブリスを通して娘が人を殺してしまったことや、夫の直接の死因がGUNDの副作用であるため、これまでのように純粋にGUNDを信頼することも出来ないのではないか。本編でエルノラ、あるいは娘のエリクトがこの問題と向き合う時が楽しみだ。

ルブリス覚醒

本作のハイライトであるルブリスの戦闘シーンの中でも、特に秀逸なのがエルノラの表情。まだ4歳の娘のGUNDに呼応して起動したルブリスの自我にも似た未知の可能性への畏怖、そのルブリスが娘を戦場に導き、無自覚とはいえ人を殺めさせたことへの悔恨を、それぞれほんの数秒で表現しているのが素晴らしい。

音楽の使い方も巧みで、それまでずっと静かだったBGMに、ルブリスを起動させたのが娘だとエルノラが気付いた瞬間、ひときわ音量の大きなコーラスが入る。とんでもないことが起こった事が直感的に伝わり、その語の戦闘シーンとラストへの推進力として申し分ない。

まとめ

以上、良かった点、気になった点をまとめてみたが、短い時間でかなり楽しめるコスパの良い作品だと改めて思う。単体で一応完結してる分、毎週放送される本編よりも人に勧めやすいのも嬉しい。

この記事を執筆している段階で本編は第4話まで放送されているが、かなり楽しめている。プロローグのSF然とした雰囲気とは違うが、テンポが良い所は変わっておらず見やすい。そっちの方も数話ずつまとめて感想を書いていきたい。