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『オビ=ワン・ケノービ』Part 4 感想

 うーん、前回よりはましだったけれどこのドラマが抱える、話の都合でキャラクターが動かされる問題は改善されていない。前回よりましなのは結局、ダース・ベイダーの登場が減って、シリーズキャラがバカに見える不快感の総量が減ったというのがほとんどだと感じた。
前回までの感想はこちら。
 
 
ネタバレ注意。
 
 
 オビ=ワンはダース・ベイダーの魔の手からターラによって助け出されたが、レイアはサードシスターに連行されてしまった。オビ=ワンはレイアを救い出すため、レジスタンスの前身と思われる組織「パス」の力を借り、ターラとともに尋問官の要塞へ乗り込む。
 本エピソードの推進力となる目標は、パスの情報を求める帝国軍の尋問でレイアの身が危ないので、一刻も早く助け出すことである。まずこのレイアに危険が迫っているという根本的な状況設定に問題がある。
 時系列的に後の作品である旧三部作に登場するレイアは生きており、大きな後遺症もない。つまりレイアが無事に救い出されることは決まってるため、視聴していてなんの危機感も湧いてこない。ではレイアの不安や恐怖といった感情的側面に焦点を当てるのかと思うと、それもない。救出されたレイアは泣き出すこともなく、いつも通り好奇心のままオビ=ワンのマントから顔を出したりする。既に完成されたレイア像に沿ってに動くロボットと化しており、ファンへの目配せ以上の効果がない。第1話の時点ではこの有様がオビ=ワンのドラマを邪魔しないことを期待し好意的に捉えていたが、ここまでドラマに関わってしまえば逆効果だ。
 またレイアを尋問するサードシスターにも違和感がある。子供から、それも拷問を通して得た情報に信憑性を見出す軍人はいないだろう。最もサードシスターであれば、信憑性に欠ける情報であってもこれまでと同じ超人的な直感で完璧に取捨選択をしてみせるだろう、という悪い予感もするが。発信機に関する展開も雑で、予測してたんなら逃がすのはレイアだけで十分だと思うんだが。というか拷問部屋にわざわざドロイド持ってったのか。発信機をつけようが基地に被害を出して、オビ=ワンを取り逃がした彼女を見逃すベイダーも甘すぎてらしくない。
 尋問官の要塞に潜入するオビ=ワンとターラは共に通信機の音声を敵に聴かれてしまうシーンがあるが、この世界にはイヤホンとかないのでしょうか。せめて予め合図を決める(安全なら1回、危険なら2回ノックする、とか)なり、危険時は電源を切るか布に包んで音を殺すなりできるだろう。ターラこれでよくスパイやってこれたな。
 本エピソード唯一といってもいい見所は、オビ=ワンがPart 2以来のジェダイらしい、即ちフォースやライトセーバーを使った活躍を見せることだ。ストームトルーパーを倒し、ビームを弾き、水圧でガラスが割れるのをフォースで押しとどめる。が、相変わらず撮り方に躍動感がなく、アクションシーンとしてはいまいちだった。棒立ちで水を止め続けるとか、迫力を出す気がないとしか思えない。あと海底基地の壁をビームで割れるようなガラスで作るな。
 また活躍したらしたで、もっと早くやっておけば…という気持ちを拭えない。第2話でも、第3話前半でもライトセーバーを抜いておけばもっと安全にレイアを救出できたろうに。敵の要塞に飛び込んで無傷で逃げ延びる人がなんでストームトルーパー数人に投降しようとするのか。そもそもアナキン生存の事実やそのアナキン=ベイダーとの対面など、エピソード3の出来事がトラウマとなりすっかりやさぐれたオビ=ワンの心をさらに追い詰めるような展開ばかりなのに、むしろどんどんモチベーションが上がっているように見えるのは何故なんだろう…。彼が常軌を逸したマゾヒストとでも考えないと説明がつかない。冗談はさておきこれは、起こった出来事がオビ=ワンの心境にもたらす変化を描いていないことによるものだ。私はこのドラマを、心に傷を負ったオビ=ワンがその傷から立ち直り、新たな希望ルークを導くべくもう一度奮起するまでを描こうとするものだと考えていた。その観点からしたら、オビ=ワンの心境の変化は何よりも丁寧に描くものだと思うが、実際は全くそれをせず、立ち直るという結果ありきの出来レースになってしまっている。
 いつの間にやら勝手にジェダイとしての勘やかつての蛮勇を取り戻しつつあるオビ=ワンを見ていると、劇中で起こるあらゆる事件がどうでもよく見えてきて辛いな。何が起こるかより、起こった事をどう受け取るかを描くのが人間ドラマだと思うんだけどね。ここが期待できない以上、何が起こるかに重きを置くショーとしての在り方に期待するしかないが第3話の有様を見れば雲行きは怪しい。既に折り返しを過ぎたがどうなるか。